日常ツバメガエシ

スポーツ観戦好きの諸々スポーツ話

逆境で耐える男

「広志様」。
そう最初に呼んだのは、いつだっただろう。もう随分前から、密かにそう呼んでいたように思う。投げる時はいつも「あんな時」だ。とても大事な、負けたら降格する大学の入替戦。どうにも劣勢ムードの序盤から。先発がものの見事に早々に5失点して試合を壊してくれた崖っぷちの試合
降格した後も、それでもずっと投げていた。打線の援護なんてあってもなくても(なかった方が多い)、2連投でも3連投でも。最下位を回避しようとして2連投先発で完投したことも、それでも最下位になってしまって入替戦で連投してチームを踏みとどまらせたことも。
大学時代は、最後の最後に昇格して「戻して」、それでささやかに報われた。…プロからお声はかからなかったけれど。
その姿に敬意を表して、「広志様」。
今日、2回にマウンドに上がった時、あの「壊れた」崖っぷちの入替戦がよぎった。そして、あの時と同じ光景が、そこにあった。
あの時と違って、援護はなかった。けれど…ずっと援護を待ち続け、マウンド上で、ただひたすら全ての逆風に、耐える。耐え続けられるのは、東北人の気質なのかもしれない。
ただ、私は知っている。ずっと前から、そうして投げ続けてきたこと。
9回。逆巻く風に煽られた打球は、左翼スタンドに入ってしまった。そこから打ち込まれて、力尽きた。途中でマウンドを降りざるを得なかった。でも…誰が責められる?
チームとしては、投手をあまり使わなくて済んだ、それだけなのかもしれない。それでも、少しでも報われてほしい。そう願わずにいられない。
そして私は、報われても報われなくても、ずっと、見ているから。耐え続けてくれている姿を、ずっと。
※今回、ああいう試合だったこともあり、コラム調にて記述